フジフィルムの一眼レフデジタルカメラ
			FinePix S1 Pro
			による流星の自動撮影システム
		
		
		などと大袈裟なものではないのですが、実際に私が使っている方法を紹介します。
先日発売された某天文誌の一角ではボディを改造してニコンのコントローラー(だったかな?)を接続出来るようにしたS1の写真が掲載されていましたが、そのような改造は一切必要ありません。
				それにほら、そんな事をやらかしたらどう考えたってメーカーの保証の範囲外ですから…。
				実際にS1を使っている人なら分かるでしょうから、ここでは今から買って使いたい、という方の参考になるような内容にします。
		
		目次
				 用意するもの
				 レンズについて
				 画像データの記録
				 カメラへの電源供給
				 カメラの制御
				 撮影後の画像処理
			
		
		用意するもの
		
		などと言っても、基本的には普通の天体写真と同じです。
				固定撮影なら三脚が必要ですし、撮影出来た流星の画像を複数枚コンポジットして放射点が分かるように仕上げたい、あるいは背景になる恒星を流したくないのなら赤道儀での恒星追尾が必要ですね。
				
				大切なのはこの後。
				S1での自動撮影の為にはパソコンとS1専用のシューティングソフトウエアが必要です。
				これを見ている人なら当然パソコンは持っているワケですよね。ノートでもデスクトップでも使えますが、カメラとの接続にUSB端子が必要です。パソコンのシステム関係は制御のところで紹介します。
				シューティングソフトも必要です。カメラとは別売、というのがネックなのですが、改造してメーカーのサポートが無くなるよりは健全でしょう。
				
				シューティングソフトのキットにはカメラとパソコンとの接続用の専用ケーブルも含まれていますが、実際にアウトドアで使うには短いために延長用のケーブルを用意する必要があります。必要な長さは使う環境で違ってくると思いますのでそれぞれの判断で用意しましょう。ちなみに私は3メートルのケーブルを使っています。
				
				この他にはS1用のACアダプターとリチウム電池の代りに入れる電池アダプターも必要ですし、気象条件によってはレンズの霜取り用の桐灰カイロやラバーヒーターも必要です。
				
				
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		レンズについて
			
			S1のCCDの面積は銀塩の35ミリフルサイズではなく、APSサイズです。
			ニコンのF60のボディをベースにしてあるので、ニコンのFマウントレンズならほとんどの物が使えますが、AFレンズでも超音波モーターで駆動するものはAFが使えないそうです。
			しかし天体撮影ならAFは必要ありませんね。3、4世代前のマニュアルレンズでも問題ありません。
			レンズの選択そのものは普通の流星の撮影と同じと考えてよいでしょう。
			ただし、CCDの面積の事があります。35ミリ換算で1.5倍の焦点距離になりますから、なるべく短いもの、つまり広角、あるいは超広角レンズを用意する方がよいでしょう。広い方が写る確率も上がりますからね。
			開放F値はもちろん明るいにこした事はありませんよね。
			
			
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		画像データの記録
			
			デジタルカメラの画像を記録するメディア、一般にはコンパクトフラッシュやスマートメディアなどが使われています(まあ、メーカーにもよりますけど…)。
			ここで問題になるのは撮影した画像、一枚あたりのファイルサイズです。
			S1では画素数を3040、2304、1440(いずれも幅)の3タイプを任意で選択出来ます。当然小さい方がメディアに記録できる枚数も増えるのですが、自動撮影状態で次から次へと撮影し続ける場合にどこまで記録出来るでしょうか?
			記録するファイル形式(JPG、TIFFなど)にもよりますが、画質を考えると画素数は多い方が良いでしょうし、当然高い圧縮率での記録も画質の低下の原因になります。
			
			仮に記録画素数を2304、ファイル形式をJPGのFineで指定すると1枚あたりのファイルサイズは1.3MBあります。JPGのノーマルでも700キロ弱ですから、容量の小さなメディアではすぐにいっぱいになってしまいます。
			メディアを複数用意しておいて、撮影しながら入れ替えていくのも方法かもしれませんが、そんな事で時間を取られて、その間にカメラの視野の中を明るい流星が流れたら……
			悔しいだけ、ですね。
			パソコンを使う理由がここにあります。専用シューティングソフトを使えばパソコンのHDを記録メディアとして使えます。この方が楽、でしょ?しかも撮影出来る枚数はHDの空き容量の全部が使えるわけですから。
			撮影後の画像のチェックにもメディアから転送して、なんて事よりも遥かに効率的です。
			
			
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			カメラへの電源供給
			
			
			
			S1には3種類の電池が使われています。
			
			
			CCDやモニターの電源となる単3電池4本、AFの駆動や内臓ストロボの電源となるリチウム電池2本、撮影時のデータや時刻などの記録用のボタン電池1個ですが、このボタン電池以外は全て取り出してしまいます。電源はACアダプターを使って100Vの交流から供給します。
			
			
			
			撮影の途中で電池が放電しきってしまったら撮影は続けられません。当然ですね。予備の電池を用意するにしても、単3を何組用意すれば一晩の撮影をカバー出来るのか、考えた事もありません。
			
			
			交流電源を確保する必要もありますが、インバーターで車のバッテリーの12Vを変換するのも一つの方法ですね。コンセントがあるならそれにこした事はありませんけども、山の中とかではそんなものは期待できません。
			
			
			仮に街灯や自販機などから取れるとしても、それは窃盗罪と同じですよ(^^;
			
			
			
			ACアダプターを使う理由がもう一つあります。画像のノイズ問題です。
			
			
			S1での最長露出時間は30秒なのですが、感度をISO1600相当に設定するとCCD特有のノイズであるダークノイズが出てきます。冷却CCDではCCDそのものをベルチェ素子などで冷却することでノイズの低減を図りますが、S1にはCCDの冷却装置はありません。
			
			
			カメラ内部で電池が放電することで発生する熱が原因でダークノイズが発生する可能性があります。30秒の露出の時の放電でどこまでノイズが出るのか、厳密に測定したわけではないのですが、今までに使った感じだと外部から電源を供給する方がノイズの出方が少ないような感じがあります。
			
			
			赤道儀などに直接乗せる場合はともかく、惑星などの拡大撮影ではこれによってカメラ自体の軽量化にもなりますね、わずかではありますが。
			
			
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			カメラの制御
			
			
			
			連続撮影と画像の保存にはパソコンを使います。
			
			
			カメラ側のPCの設定は接続の前に<撮影>に合わせておきます。これが<転送>になっているとパソコンからの撮影は出来ません。
			
			
			ケーブルでカメラとパソコンとを接続してからカメラの電源を入れ、その後でシューティングソフトを起動します。
			
			
			撮影ウインドの左上に<カメラ>、<ホスト>の二つのボタンがありますから、<ホスト>を選んでおきましょう。これが<カメラ>になっているとパソコンからの撮影は出来ません。
			
			
			ウインドの中の設定ボタンから撮影の設定ウインドを開いて絞りや露出時間などの設定を済ませたらもとのウインドに戻り、<インターバル>ボタンを押します。<インターバル>の設定画面で撮影枚数と画像の保存先のフォルダを選択したら<撮影>ボタンを押しましょう。
			
			
			後は指定した撮影枚数になるまで勝手に撮影してくれます。
			
			パソコンを使う理由がもう一つあります。
			デジカメでは銀塩と違って撮影したその場でモニターを使って結果を確認する事が出来ます。
			ところがそのモニター、どのデジカメのものでも大きなものではありません。
			普通のスナップ写真ならまだしも、撮る対象は星、基本的には点のようなものです。どんなデジカメのモニターでも撮った画像そのもののオリジナルのサイズで確認する事は出来ません。カメラによってはS1のようにプレビューから拡大する事も出来るでしょうが、モニターそのものの解像度にも限界があります。モニターではちゃんと写っているように見えても拡大したら微妙にピントが狂っていた、などという事態は無いとは断言出来ません。
			しかしパソコンの高解像度のディスプレイでちょっとだけ拡大して見ればそのあたりも一目瞭然です。
			普通ならカメラのレンズのピントリングは無限大のところまでしか回らないのですが、私がS1での流星撮影専用に用意したシグマの20ミリF1.8は無限大のちょっと先までリングが回ってしまいます。試しに撮ってみたらやっぱり少しボケました。メーカーの温度保証範囲の関係もありますし、温度変化によるズレも否定出来ません。
			撮ったその場で確認出来るデジカメの特徴、有効に使いたいものですね。
			パソコンでのピントの確認、これはカメラレンズでの撮影だけではなく、直焦点撮影や惑星、月などの拡大撮影の場合にも有効な手段です。
			
			さて、その制御に使うパソコンですが、マニュアルではG3以降のCPUを搭載、USB端子を標準装備したPowerMac、PowerBook、iMac、iBookでのみ作動を保証しているのですが、本当にそれだけでしょうか…?
			
			
			
			ということで98年モデルのPowerPC G3/233を搭載したUSB端子の無いPowerBookG3(Wallstreet)で使ってみました。
			PCIカードバスでPCカードからUSBへの変換アダプターを使ってみました。メーカーであるフジフィルムはこのような環境での作動は保証していないのですが、なんの事はありません、ちゃんと問題無く作動しました。
			ただしOSはUSBをサポートする為にも最低でも8.6、できれば9.0.4あたりが良いかと思います。
			現在ではDual USBのiBookを使用しています。
			自宅ではPowerMac7300改・G4-400を使用しているのですが、この7300にはUSB端子は有りません。しかしUSB・FireWireのPCIコンボカードを取り付けてみたところ、これでも問題無くシューティングソフトを使用する事ができます。
			もちろん最新のPowerBookG4なら何の心配も無いでしょう。
			へ?ウインドウズの場合ですか?そうですね〜、S1をウインドウズのノートあたりで使っている人を探して聞いてみてください(^^;
			
			
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			撮影後の画像処理
			
			
			
			S1での最長露出時間は30秒です。
			
			
			他のメーカーの一眼レフデジカメよりもはるかにダークノイズは少ないのですが、それでも全く無いわけではありません。
			
			
			PhotoShopのスタンプツールでひとつひとつ消していく事も出来ますが、もっと簡単な方法もあります。
			
			
			
			S1のダークノイズは極めて再現性の高いノイズです。
			
			
			実際の撮影の時に同じ露出時間でダークフレームを撮影しておきましょう。方法は簡単、レンズにキャップを付けて撮影するだけです。
			
			
			撮影の時間の経過と共にノイズの出るピクセルも変化してくる可能性もありますので、連続撮影の前と後、そして途中の段階で一定の時間ごとに時々ダークフレームを撮っておけば十分でしょう。
			
			
			現に以前の撮影の時には20枚の連続撮影の前に撮った一枚のダークフレームだけでその20枚全てのノイズの除去が出来ました。
			
			
			
			ノイズ除去にはPhotoShopを使います。
			
			
			ノイズを除去したい画像を開いておき、その画像を撮ったところから一番近い時刻に撮っておいたダークフレームも開きます。
			
			
			ダークフレーム全体を選択してからコピー、除去したい画像にペーストします。次にレイヤースタイルで描画モードを<差の絶対値>を選びます。これだけ。
			
			
			そうすると画像のところどころにあったダークノイズがものの見事に……。
			
			
			機会があったら自分の目で確かめてみてください。
			
			
			
			これは一種のコンポジットなのですが、ネガをフィルムスキャナで読み込んだ時と違って位置や回転で座標をあわせる必要はありません。
			
			
			とりあえずやってみてくださいね。
			
			
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